7月も中旬になり、事務担当者の方々は少し仕事が一段落されたでしょうか?
前回、「NPO法人会計基準」は、一般市民に広く情報公開するために使われる会計処理の考え方であって、総会で活動報告をするためや的確な経営を行うためのものではないというお話をしました。
今日は、「会計」というものについて、知っているようではっきりとは知らない基本的なお話をしたいと思います。
1.会計とは
一般的に「会計」とは、金銭や物品の出納を記録、計算、管理、報告することをいい、大きく「財務会計」と「管理会計」の2つに分けられます。
①財務会計とは
制度会計とも言われ、法に沿って財務諸表(計算書類)を作成、開示する公的な会計をいい、「会計」や「経理」というときの一般的なイメージがこれに当たります。
②管理会計とは
主に経営者が経営判断を行うための会計をいい、法的な定義はありません。
したがって、経営者が見たい帳票を作成するので、各企業・団体によって様々な形式・帳票類が考えられます。
2.NPO法人の財務会計の根拠
NPO法人の財務会計については、次の2つに規定されています。
①特定非営利活動促進法(NPO法)(2011年6月15日改正、2012年4月1日施行)
②NPO法人会計基準(2010年7月20日、NPO法人会計基準協議会公表)
このうち、①は法律なので、そこの規定された会計の処理方法については遵守しなければなりませんが、②の会計基準は、法的な拘束力があるものではありません。しかし、内閣府は、2011年5月から発足させた「NPO法人会計の明確化に関する研究会」の最終報告書の中で、NPO法人会計基準を「現段階においてNPO法人の望ましい会計基準であると考える」としています。
3.特定非営利活動促進法(NPO法)の規定内容
特定非営利活動促進法には、NPO法人の会計処理について次のように規定されています。
(会計の原則) 第二十七条 特定非営利活動法人の会計は、この法律に定めるもののほか、次に掲げる原則に従って、行わなければならない。一 削除二 会計簿は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること。三 計算書類(活動計算書及び貸借対照表をいう。次条第一項において同じ。)及び財産目録は、会計簿に基づいて活動に係る事業の実績及び財政状態に関する真実な内容を明瞭に表示したものとすること。 四 採用する会計処理の基準及び手続については、毎事業年度継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと。 |
この中では、次のような会計原則が定められています。
①正規の簿記の原則
一般的には、以下の要件を満たす簿記を「正規の簿記」と呼んでいます。
ⅰ)網羅性(すべての取引が網羅的に記録されていること)
ⅱ)立証性(会計記録が検証可能な証拠書類に基づいていること)
ⅲ)秩序性(すべての会計記録が継続的、組織的に行われていること)
これら要件を実現するためには、
一般的に、取引発生順の記録としての「仕訳帳」と科目別記録である「総勘定元帳」の2つを複式簿記の原理に基づいて作成した結果として、誘導的に財務諸表を作成することであるとされています。(現預金の取引しかないといったような場合は、単式簿記でも上記3つの要件を満たすことが可能ですが・・・)
ここで、「誘導的に」というのは、仕訳帳、総勘定元帳といった帳簿から数字が「集計されて」いるといった意味であり、原則として、決算日当日にいきなり現金や普通預金の残高を数えたり、車両、備品等の価額を見積もったりして財務諸表を作るのではないということです。
②真実性・明瞭性の原則
会計にウソがあってはいけません。また、一般市民に対して説明責任を全うするため、わかりやすく財務諸表を表示することが求められています。
③継続性の原則
法人がいったん採用した会計処理の方法は、原則として継続して採用するよう求められています。
次回は、上記の会計原則のうち、特に日常処理で必要な簿記に関して重要となる「正規の簿記の原則」について考えたいと思います。