1.小口現金とは

法人の規模が大きくなったり、事業を複数展開するようになると、事務局などの管理部門の他に、各事業部門や他の事務所など他部著が設けられてきます。その場合、それぞれの部署が日常の少額経費を、必要になる都度、事務局の会計担当者(会計係)にもらっていたのでは不便になってくるでしょう。そこで、それぞれの部署に「用度係」(その部署の会計担当者)という係を置いて、そこで少額の現金の管理を任せる場合があります。この少額の現金を「小口現金」といい、事務局の「現金」勘定とは別に、「小口現金」勘定を設けて管理をします。

 

語句の説明

勘定科目の説明

2.インプレスト・システム

通常、法人では、他の事務所等に小口現金として金銭を渡す場合は、会計係が用度係に、毎月または毎週といった一定期間に一定額を前渡しする方法が採られます。

このような方法を「インプレスト・システム(定額資金前渡法)(ていがくしきんまえわたしほう)」といいます。

 

(1)この方法の一般的な運用法は、次のとおりです。

①まず、一定額の資金が会計係から用度係に渡されます。

②用度係は、その中から日々の小口経費を支出し、一定の期間が終了したら、会計係に使った経費を報告します。この場合の「一定の期間」とは、各法人によって決めればよいのですが、よくある例としては、1週間または1か月間が多いようです。

③会計係は、支出の報告を受けたら、その支出額と同額の資金を用度係に補給します。

このように、インプレスト・システムでは、常に小口現金から支出された額と同額が補給されるので、補給後に使える「小口現金」は、常に一定額となります。

 

(2)この方法の例外的な運用法もあります。

①まず、一定額の資金が会計係から用度係に渡されます。

②用度係は、その中から日々の小口経費を支出し、その期間が終了したら、管理部門の会計係に使った経費を報告すると同時に、余った資金も全額返還します。
すなわち、用度係の手元資金は一旦「0」となります。

③会計係は、支出の報告を受けたら、①と同額の資金を用度係に補給します。
この方法でも、常に小口現金に同額が補給されるので、補給後に使える「小口現金」は、常に一定額となります。

 

3.小口現金の処理

次に説明する小口現金の帳簿処理を行うのは、事務局の会計係です。用度係は帳簿処理は行いませんので、勘違いをしないように注意してください。

 

(1)会計係が小口現金を用度係に前渡ししたときの仕訳

<ポイント>

普通預金から引き出された現金は、すぐに用度係に渡されていますので、まず、「普通預金」(資産グループ)が減りましたので、貸方(右側)に記入します。そして、「小口現金」が増えましたが、「小口現金」は資産グループなので、増えたら借方(左側)に記入します。

 

(2)用度係が小口現金から経費を支払ったときの仕訳

<ポイント>

用度係が小口現金を預かっている期間中は、小口現金から支出しても、その担当部署で「現金出納帳」などに記入し管理するだけであり、本部の会計係は報告を受けていないので、仕訳はできません。(仕訳などの会計処理は、あくまでも会計係(会計担当者)が行います。

 

(3)用度係が会計係に支払いの報告をしたときの仕訳

勘定科目の説明(これ以外の勘定科目については、前回までのテキストを参照のこと。)

<ポイント>

用度係から報告を受けたので、会計係が仕訳をします。

「消耗品費」、「通信運搬費」、「旅費交通費」(これらはすべて費用グループ)が発生し増えたので、借方(左側)に記入し、資産である「小口現金」は、費用の金額分だけ減ったので、貸方(右側)に記入します。ここで、借方(左側)合計と貸方(右側)合計が一致していることを必ず確認する癖をつけてください。(なお、会計ソフトの場合は、ソフト自体が貸借一致しているかを自動判断します。)

 

(4)会計係が小口現金を補給したとき仕訳

<ポイント>

インプレスト・システムでは、会計係は、小口現金が支出されて不足が生じたら、原則として、その不足の金額だけ補給をします。

補給されると、「小口現金」(資産)は増えるので、借方(左側)に記入します。

 

コラム(用度係が会計係に行う小口現金の支出状況の報告について)

用度係が会計係に行う「小口現金」の支出報告は、通常、用度係が「小口現金出納帳」などに支出の日付順に記入して、これを会計係に提出することによって行います。

しかしながら、NPO法人において用度係となる方は簿記を知らない場合も多々あるので、その場合は、法人内部で「小口現金出納帳」に代わる報告様式を作成されて運用されてもよいでしょう。その後、徐々に小口現金出納帳の記入方法などを担当者間で話し合いながら、よりスムーズで正確な会計処理ができるよう勉強されるのが良いと考えます。

 

次は、今回学んだところについて、問題練習(テキスト第08回分)をしてみましょう。