毎日、西日本を中心に猛暑が続いていますが、皆さんは、熱中症対策はしっかりお取りになられているでしょうか?
夏休みもそこそこに日々暑い中を出かけられ事業を展開されている担当者の方も水分をしっかりとって、頑張っていただきたいと思います。
事務担当者のみなさんは、お仕事の遅れなどを取り戻せているでしょうか?
事務は書類が一旦溜まりだすと、処理するには通常の2~3倍の労力が必要となります。
ぜひ、この8月9月で追いつけるよう、効率的な作業を心がけていただきたいと思います。それでも、大変だという法人様に対しては、当研究所では、この1か月だけ手伝ってほしいといった一時的な会計処理や書類整理等の受託事業も承っておりますので、12月、1月ごろになっても作業が追い付かないといった緊急事態に陥る前に、当研究所の事業内容をご覧いただき、お早めにご相談ください。
さて、前回は、NPO法の会計原則のうち、特に重要な「正規の簿記の原則」について見てきましたが、今回は、この「正規の簿記の原則」日常処理でどのように具体化されているか、また具体化されるべきかについて見ていきましょう。
正規の簿記の原則と日常処理
NPO法では、「正規の簿記の原則」に従って正しく記帳することが要求されていますので、「正規の簿記」の要件を満たすことができる正しい記帳方法、書類整理などについて考えたいと思います。(なお、ここでは「複式簿記」を念頭に置いていますので、ご理解ください。)
まず、正規の簿記の原則が要求している要件は次の3つでした。
ⅰ)網羅性
ⅱ)立証性
ⅲ)秩序性
詳しくは、前回の記事「今さら聞けない「NPO会計」の考え方(その2)」をご覧ください。
それでは、上記3つの要件を満たしつつ、帳簿作成、会計書類の整理、組織的な会計運営を考えてみましょう。
①まず、すべての取引は、帳簿に記載されていなければなりません。前回も書いたとおり、よく見かけるのは、帳簿で計算した現金の額(これを「帳簿残高」といいます。)と実際の金庫等で管理されている現金の額(これを「実際現金有高」といいます。)が異なっている場合の誤った処理方法です。
本来はその原因を探して適正な処理をしなければなりませんが、その過剰分は別の缶や机の引き出しに一時保管し、不足分が出たときは、担当者の責任としてポケットマネーから出したり、以前の過剰分(缶や机の引き出しにしまってある分)から補てんしたりすることがあります。
これらは、簿記上の取引に当たりますので、これらも帳簿に記載しなければなりませんが、実態は上記のまま処理されずになっていることがあります。
このような処理をしないことを徹底して、適正な処理を心がけることがまず必要です。
②次に、すべての取引が帳簿に記載されていることがはっきりわかるようにするために、次の帳簿がそろっていることが必要です。
ⅰ)仕訳帳
これは、取引を日付順に記載された帳簿です。日付順に載せているので、途中での改ざんをしにくくする効果があります。ただし、現在はパソコンでの会計ソフトが主流であり、仕訳内容の修正、変更をはじめ、後日に前日以前の日付での仕訳の追加や既に載せられている仕訳の削除等を簡単にすることができるようになってしまいましたので、日付順に仕訳を記載しなければならないという感覚が薄くなってきているようです。
(注)なお、大抵の会計ソフトには、そういった加除訂正等があったことを後で調査できる機能が付いていますので、不正行為に利用された場合は、すぐに発見されるということをご承知おきください。
ⅱ)総勘定元帳
これは、取引を勘定科目別に集計した帳簿です。仕訳を仕訳帳に記入したら、そこで使用された勘定科目について、日付や金額等をこの総勘定元帳に転記(移して記載すること)します。そこで、仕訳帳の借方合計、貸方合計と総勘定元帳全体の借方合計、貸方合計は一致することになります。万一一致しない場合は、転記ミス等の誤りを発見できます。なお、会計ソフトではこの転記作業は自動で行われるので、合計が一致しないことは、まずあり得ません。
以上、2つの帳簿は主要簿と呼ばれ、必ず事務所に備えておかなければならない帳簿です。この2つの帳簿により、取引の全容が分かる仕組みとなっています。
③さらに、上記の帳簿に記録される取引には、すべて外部から見ても証拠となる書類が整えられていなければなりません。
この「証拠資料」は、単に領収書があるだけでは不十分です。
その理由は、帳簿に「○○事業」の「消耗品費」30,000円と記載されていて、それに関する領収書があっても、その領収書の内容が本当に「○○事業」の「消耗品費」に該当するものであることがわからなかったら、証拠があるとは言い難い場合もあるからです。
そこで、次のような処置をしておくと、証拠能力が上がるものと考えます。
ⅰ)領収書を発行した事業者(会社や商店等)に、領収書の但し書きの欄に領収金額に関する内容をはっきりと書いてもらうこと。
ⅱ)その領収書をその法人が支払わなければならない根拠を示すことができるようにしておく。
特に、ⅱ)の具体的な対処事例を見ておきましょう。
前回にも書いたことですが、証拠書類は、外部からの領収書や請求書などだけではなく、支払い承認や入金確認を法人内部で行うことも証拠書類を整えていることになります。
以下に例をあげて説明してみます。
請求書に基づいて費用を支払う場合やスタッフが立替払いをした費用を支払う場合などでは、「支払伺い」とか「支払請求伝票」などの名前で呼ばれる内部の責任者の支払い承認を取るための様式を準備し、請求書や立替金精算書などに添付し、内部の責任者に提出して承認をもらうことが有効です。
これらの様式を使うと、支払いの必要性や支払う時期、予算との整合性などを書くことで、その法人で決められている責任者(「その事業の責任者」、「事務局長」、「理事長」など)に確認印やサインをもらい、その承認の上で支払いを行ったことが証明でき、「立証性」だけでなく「秩序性」も満たすことができます。
この「支払伺い」や「支払請求伝票」といった書式のフォームはご要望があれば、またご案内させていただきます。
これらの書類をもとに仕訳がなされ、仕訳帳、総勘定元帳が作成されていきます。その場合、この元の証拠資料である書類はどのようにファイリングされているのが良いでしょうか?
それは、仕訳帳と同様、すべての書類は日付順でファイリングされることです。
ファイリングの詳しい説明は、後日に委ねることとしますが、簡単に言うと、書類を引き出す時(自分で調べるときや税務署その他の行政検査など)は、日付さえわかれば、その書類を短時間(2~3分程度)で探し出すことができるからです。
④最後に、会計記録は、継続的、組織的に行う必要があります。
具体的に言うと、会計記録は、毎日、一元的に管理された状況で行われることが必要なので、会計担当者と責任者を置いて、お互いにチェックする体制が必要です。決して理事長ご本人が会計担当者と会計責任者を兼ねるようなことは避けなければなりません。特に設立したての法人の場合は、資金の問題から事務スタッフを雇用できず、理事長が一人ですべてこなそうとされるところがありますが、それでは、理事長の本来の仕事は誰がするのでしょう?結局、理事長としてやるべき仕事に時間がさけず、資金や賛同者を集め、事業を上手く回せなくなるリスクが大きくなります。
設立自体は、正味財産「0円」でもできますが、事業を回すための運転資金はある程度確保されてから設立に臨まれた方が、後々発展の速度に違いが出ることも多いので、よく計画を練って設立されることをお勧めします。
これまでいろいろご説明してまいりましたが、そうはいっても、すでに設立してしまい、事務スタッフの確保も難しい現実の中にある法人様がいらっしゃいましたら、今回の記事の初めにも書きましたが、理事長様お一人で悩まずに、できるだけ早急に当研究所にご相談ください。
費用面のご不安がおありの法人様もお気軽にご相談ください。無理のない支援計画をご一緒に立てさせていただきます。
当研究所は「あなたに最適な事務のあり方をご提案します」。